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事故現場は彼の通う高校のそばを流れる川沿いを走る道路だった。
教師と共に駆けつけた少年は、興味本意で集まった人だかりの中に血まみれで倒れる姉を見つけた。
彼女は目をつぶり、赤く染まった胸を押さえたままピクリともしない。
「姉ちゃんっ!!」
人ごみを掻き分けて姉にの元にたどり着く。
そして肩をつかみ、激しく揺すりながらひたすら姉を呼んだ。
「姉ちゃん!姉ちゃん!おい、起きろよ、姉ちゃん!」
「だめだっ!」
遅れてやってきた教師が少年の手を掴む。
「頭を打ってる。揺らしちゃだめだ」
少年はハッとしたようにその手を姉から離した。
「すぐに救急車が来るから、落ち着いて。名前を呼び続けて」
「……はい」


それから五分後、救急車が到着した。
少年は姉に付き添って一緒に乗り、それから三十分後には姉の死を見届けていた。
最期の言葉は、うまく聞き取れなかったが、こう聞こえた。

「負けないで。どんな事にも、絶対……」

それきり姉は呼びかけに答えることはなく、手を握り返すこともなくなり、
そして心臓が動いていることを表していた音が、止まった。
少年は泣いた。
そして何度も叫んだが、姉が再び動き出すことはなかった。

その後少年は、一人住人の減った我が家へと帰った。
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