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チク、タク、チク、タク、チク、タク……
暗く、重い空気の漂う室内に時計の音が鳴る。
その中に一人、ソファに少年がうずくまっていた。
見れば手やズボンの膝、すねの部分にはまだ乾かない血がついていて、
血が袖に付くのにも構わず、少年は膝を抱えていた。
「どうして……どうして……こんなことにっ…」
呻くようなつぶやき。
彼は悲しんでいるようだった。
机の上には、飲みかけのココアが置いてある。
しかし彼は、あまりココアという飲み物が好きではない。
このココアは彼の姉が淹れ、四時間ほど前まで飲んでいたのだ。
だがその四時間の間に、彼女は交通事故で死んでしまった。
少年は彼女の死を悼んで泣いていた。


少年が家に篭り、塞ぎこんでしまうその三時間前。
彼はいつも通り、市内の高校で授業を受けていた。
といっても、あまり進学に熱心ではない彼は寝ているだけだったのだが。
そこへ、若い新任教師が飛び込んできた。
「授業中失礼します。藤宮さん、付いて来て下さい」
生徒が一斉に目を向ける。その中の一人が、
「どーしたんですか?先生。俺何もしてませんよ?」
そう答え、そして教師の後について授業中の静かな廊下に出た。
「そうじゃない。いいですか、落ち着いて聞いてください」
いつもとは違う、真剣な表情に、思わず少年は身構えた。
「何です?」
「たった今、あなたのお姉さんが交通事故にあいました」
「はっ?!まじっすか?!」
あまりにも予想外な知らせに、少年の口調が乱れた。
「はい。このすぐ近くで、救急車はまだ来ていません」
「先生、行かせてください!」
彼は興奮したままに続ける。
「場所はどこですか?!怪我は大丈夫なんですか?!」
「落ち着いてください!ここで慌ててもどうにもなりません。落ち着いて、一度深呼吸して」
すうぅ、はぁっ
少年肩が一度、大きく上下する。
「とにかく、事故現場に行きましょう。いいですね?」
教師の問いかけに、少年は無言でうなずく。
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